会社設立の流れの順番は会社法のどこに書いてあるか|駅ごとの根拠条文を原文で対応づける

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条文はe-Gov法令API(会社法は2026年8月12日施行、商業登記法・公証人法は2026年6月24日施行の版)で2026年10月11日に確認しました。株式会社の発起設立を前提にしています。
この記事は、こんな人に向けて書いています
会社設立の手順の解説を読んで「なぜこの順番なのか」「どの法律に書いてあるのか」が気になった人。手順を丸暗記するのではなく、根拠の条文を一度見ておくことで、順番を入れ替えてよいかどうかを自分で判断できるようになりたい人に向けています。
会社設立の解説記事には、定款、認証、払込み、登記という順番が当然のように書かれています。けれども、その順番を決めているのは解説者ではなく法律です。どの条文が、どの駅を、どの駅の後ろに置いているのかを知っておくと、手順の意味がはっきりします。
この記事は、路線図の駅を一つずつ取り上げ、その駅の根拠になる条文を並べたものです。条文は要約ではなく、e-Gov法令検索の原文で文言を確かめています。法律の解釈論には立ち入らず、「この駅はこの条文があるから、ここにある」という対応関係に絞りました。
なお、ここで扱うのは株式会社の発起設立(発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法)です。合同会社の条文の違いは、最後の方で比較として短く触れます。
N01駅の並びと条文の並びはほぼ一致する:会社法25条から49条まで

会社設立の流れの出発点として、会社法25条1項は、株式会社の設立の方法を二つ定めています。1号が、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法(発起設立)、2号が、発起人が引き受けるほか引き受ける者を募集する方法(募集設立)です。小さな会社の多くは1号の発起設立を選びます。同条2項は、各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないとしています。
発起設立の条文は、おおむね会社設立の手続が進む順に並んでいます。定款の作成(26条)、記載事項(27条〜29条)、公証人の認証(30条)、株式に関する事項の決定(32条)、出資の履行(34条)、設立時役員の選任(38条)、設立時取締役による調査(46条)、そして株式会社の成立(49条)です。路線図の駅の並びは、この条文の順番をそのまま実務の手順に置き換えたものだといえます。

N01からN03(思い立つ、決める、印鑑)には、順番を直接定める条文はありません。決める駅の内容は定款の記載事項として26条以下に、印鑑は登記の申請の段階で関わってきます。会社法が順番を決めているのは、定款の駅から先の区間だということになります。
メモ 条文の番号と文言は、2026年10月11日にe-Gov法令APIで取得した原文で確認しています。法改正で番号や文言が変わることがあるので、使う前に最新の条文を確かめてください。
N02定款の駅の根拠:会社法26条(作成)と27条・28条(書くこと)

会社法26条1項は「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない」と定めています。会社設立の流れの最初の法的な手順が、定款の作成であることの根拠です。同条2項は、定款を電磁的記録で作成できることを定めており、これが電子定款の根拠になります。
会社設立の準備で最初に効いてくる27条は、定款に必ず記載しなければならない事項として、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所の5つを挙げています。N02「決める」の駅で決めておくべき事項の多くが、ここから来ています。
- 27条1号 目的
- 会社が行う事業
- 27条2号 商号
- 会社の名前。会社法6条2項により「株式会社」の文字を用いる
- 27条3号 本店の所在地
- 公証役場と法務局の管轄を決める
- 27条4号 出資される財産の価額
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 27条5号 発起人
- 氏名または名称と住所
28条は、金銭以外の財産の出資(現物出資)や、会社の成立後に譲り受けることを約した財産、発起人が受ける報酬などの特別の利益、会社が負担する設立に関する費用について、定款に記載しなければその効力を生じないと定めています。これらは定款の駅で書き込んでおかないと、後の駅では取り返しがつきにくい事項です。
法務省の発起設立の説明では、定款の記載事項を絶対的記載事項(27条)、相対的記載事項(28条など)、任意的記載事項に分けて整理しています。記載事項の選び方は、登記・定款・登記申請書の書き方を扱う姉妹サイトのテーマです。
N03公証役場の駅の根拠:会社法30条と公証人法57条〜59条

株式会社の流れでN04の次にN05が置かれている根拠は、会社法30条1項です。「第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」。定款を作っただけでは効力がないので、認証という駅を通らなければ先へ進めません。
認証は流れの分かれ目でもあります。同条2項は、公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、33条7項・9項または37条1項・2項による場合を除き、変更できないと定めています。認証の駅を出たあとは、定款の内容が原則として固定されるということです。会社設立の手順で「定款を固めてから認証に進む」と言われるのは、この条文があるためです。
会社設立の流れの中でどの公証人に認証を頼むかは、公証人法が定めています。57条は、会社法30条1項による定款の認証の事務は、法人の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人が取り扱うとしています。58条1項は、書面の定款の認証の嘱託は定款2通を提出してしなければならないとし、59条は、指定公証人が電磁的記録に認証を与える手続を定めています。

メモ 公証人法の条番号は、2026年6月24日施行の版で確認したものです。法務省や日本公証人連合会のページには、改正前の条番号(法務省の発起設立の説明では「公証人法第62条の2」)が残っている箇所があります。読むときは番号のずれに注意してください。
N04払込みの駅の根拠:会社法32条(決定)と34条(遅滞なく全額)

会社法32条1項は、発起人が、割当てを受ける設立時発行株式の数、それと引換えに払い込む金銭の額、成立後の資本金および資本準備金の額に関する事項を、定款に定めがない場合には、その全員の同意を得て定めなければならないとしています。払込みの前に、誰が何株をいくらで引き受けるかを決める手順があるということです。
そのうえで34条1項は、発起人は設立時発行株式の引受け後遅滞なく、引き受けた株式について出資に係る金銭の全額を払い込み、または金銭以外の財産の全部を給付しなければならないと定めます。同条2項は、払込みは発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所においてしなければならないとしています。

払込みをしない発起人がいる場合について、36条は、発起人が期日を定めて出資の履行をするよう通知しなければならず、その通知は期日の2週間前までにしなければならないこと、期日までに履行しなければ株主となる権利を失うことを定めています。共同で会社をつくる場合に、払込みの駅が長引く可能性がある条文です。
払込みの書面の作り方(通帳の写しなど)は、登記の駅で添付する書面として商業登記法47条2項5号に関わります。どのタイミングで入金するかの実務は、資本金 払込 タイミングのカテゴリーで扱っています。
N05登記書類の駅の根拠:会社法38条・46条と商業登記法47条

会社設立の流れでは、払込みの駅のあと、登記の申請までのあいだに、会社法が二つの手順を置いています。38条1項は、発起人は出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければならないと定め、46条1項は、設立時取締役がその選任後遅滞なく、出資の履行が完了していることや、設立の手続が法令または定款に違反していないことなどを調査しなければならないと定めています。

路線図のN07「登記書類」は、この選任と調査の結果を書面にまとめる駅です。商業登記法47条2項は、設立の登記の申請書に添付する書面として、定款(1号)、払込みがあったことを証する書面(5号)、設立時代表取締役を選定したときはそれに関する書面(7号)、設立時取締役などが就任を承諾したことを証する書面(10号)などを挙げています。
つまり流れの後半、登記書類の駅でそろえる書面の多くは、前の駅で起きたこと(定款の作成と認証、払込み、選任)の証拠です。前の駅が終わっていなければ、書面も作れません。会社設立の流れで登記書類の駅が後ろの方にある理由は、ここにあります。
取締役会を置く会社では、39条1項により設立時取締役は3人以上でなければなりません。会社の形によって必要な書面が変わるので、書類の一覧は会社設立の必要書類を扱うテーマで確かめてください。
N06法務局の駅の根拠:会社法49条(成立)と911条(2週間以内)

会社法49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています。路線図のN08「登記申請」がこの流れの山場で、この日が設立の日になる根拠がこの条文です。法務局の案内でも、会社の設立年月日は登記所が設立登記の申請を受け付けた日になると説明されています。
流れの中で登記をいつまでにしなければならないかは、911条1項が定めています。株式会社の設立の登記は、本店の所在地において、46条1項の調査が終了した日と、発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません。登記を申請する人については、商業登記法47条1項が「設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によつてする」としています。

法務局の申請書様式のページでは、登記すべき期間内に登記を怠った場合でも、そのことだけで申請が却下されることはないが、代表者が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性がある、と説明しています。期限は条文で決まっているので、調査の日付と申請日のあいだを空けすぎないように日程を組みましょう。
50条1項は、発起人は株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となると定めています。登記の申請の日に会社が生まれ、同じ時に発起人が株主になる、という関係です。
N07審査の駅の根拠:商業登記法24条(却下と補正)と27条(商号)

会社設立の流れの終盤、申請のあとのN09「審査」の駅にも条文の根拠があります。商業登記法24条は、登記官が理由を付した決定で申請を却下しなければならない事由を15号にわたって並べています。管轄違い(1号)、方式違反(6号)、必要な添付書面がないとき(7号)、記載が添付書面や登記簿と合致しないとき(8号)、登録免許税を納付しないとき(15号)などです。
同条ただし書は、申請の不備が補正できるものである場合に、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは、却下しなくてよいとしています。審査の駅で「補正」の連絡が来るのは、この仕組みがあるためです。法務省は、オンラインによる設立登記申請で多い補正の内容と対処方法を公開しています。
24条12号は、27条の規定により登記できない商号の登記を目的とするときを却下事由に挙げています。27条は、他人がすでに登記した商号と同一で、かつ本店の所在場所も同一であるときは、その商号の登記はできないとしています。N02の駅で商号調査をしておくべき根拠は、この二つの条文の組み合わせにあります。
24条本文
却下事由がある場合、登記官は理由を付した決定で却下しなければならない
24条ただし書
補正できる不備を、登記官が定めた相当の期間内に補正したときは却下しない
27条
同一の所在場所に同一の商号は登記できない
審査の駅の日数は条文では決まっていません。法務局が公表する登記完了予定日で確かめるもので、2026年9〜10月申請分の公表例では福岡・仙台の本局で申請から11〜17日でした(2026年10月11日確認)。補正の流れと日数への影響は、遅れる 原因 補正のカテゴリーで扱っています。
N08合同会社の路線では何が省かれるか:会社法575条〜579条

同じ会社設立でも、合同会社の流れが株式会社より短く見えるのは、条文の構造が違うからです。会社法575条1項は、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)を設立するには、社員になろうとする者が定款を作成し、全員が署名または記名押印しなければならないと定めています。ここまでは株式会社と似ていますが、30条に当たる「公証人の認証を受けなければ効力を生じない」という規定は、持分会社の設立の条文にはありません。法務省の補正事例でも、合同会社の定款については公証人による認証は不要と明記されています。
合同会社の流れでの出資について、578条は、合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、設立の登記をする時までに出資に係る金銭の全額を払い込むなどしなければならないと定めています。579条は、持分会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立するとしています。

合同会社の流れの詳細は、合同会社を自分でつくる・一人でつくるテーマを扱う姉妹サイトの担当です。このサイトでは、合同会社 株式会社 違いのカテゴリーで、止まる駅と通過する駅の違いとして比べています。
N09まとめ:条文を知ると、入れ替えてよい手順が見えてくる

会社設立の流れのうち、定款の駅から登記の駅までの順番は、会社法と商業登記法、公証人法の条文で決まっています。定款の作成(26条)、認証(30条)、払込み(34条)、選任(38条)、調査(46条)、登記による成立(49条)、そして審査と補正(商業登記法24条)。この骨組みは入れ替えられません。
- 定款を作る前に、27条の5項目と28条の事項を決めておく
- 株式会社は、認証の前に本店の管轄と定款の内容を確定させる(30条2項・公証人法57条)
- 払込みは引受けの後に遅滞なく全額を、発起人が定めた銀行等で(34条)
- 選任と調査を終えたら、2週間以内に登記を申請する(911条1項)
- 商号調査は、申請の前に済ませる(商業登記法27条・24条12号)
反対に、条文が順番を決めていない手順は、流れの中で工夫の余地があります。印鑑の注文、書類の下書き、公証役場への問い合わせなどは、条文の駅の待ち時間に重ねて進められます。どの手順を並行できるかは手順 順番 並行のカテゴリーで、全体の路線図は全体像 図解のカテゴリーで確かめてください。
根拠の条文を一度読んでおくと、解説記事の手順が「なぜそうなっているのか」まで理解でき、自分の会社に当てはめるときに迷いが減ります。順番の根拠を期限や効力の観点から読み直した記事も、このカテゴリーで扱っています。
終点のその先へ
まずはe-Gov法令検索で会社法26条から49条までを一度通して開いてみてください。路線図の駅が、条文の並びとしてそのまま見えてくるはずです。条文の順番が頭に入れば、どの手順を待ち時間に重ねてよいかも自分で判断できるようになります。
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