定款の駅から公証役場の駅まで|会社設立の流れで最初の「待ち」をどう組むか

乗車案内この記事が扱う区間
株式会社の流れだけが停車する区間です。合同会社は定款の認証が要らないため、この区間を通過します(2026年10月11日確認)。
この記事は、こんな人に向けて書いています
株式会社をつくる予定で、定款の案が見えてきた人。「公証役場には、いつ、何を持って、どう連絡すればいいのか」を、会社設立の流れの中で前後の駅とつなげて理解したい人に向けています。
会社設立の流れを路線図で見ると、前半は作業の駅が続き、N05の公証役場の駅で初めて「相手の都合で進む区間」に入ります。ここを行き当たりばったりで通ると、払込みも登記の申請も後ろへずれていきます。
この記事は、N04「定款をつくる」からN05「定款の認証」までの区間に絞った案内です。定款の条文の書き方には立ち入らず、どの順番で何を済ませれば公証役場の駅をスムーズに通過できるかを、手順の並びとして説明します。

株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。そのため株式会社の会社設立の流れでは、定款をつくる駅のすぐあとに、公証役場で認証を受ける駅が置かれています。

路線図で見ると、N04までは白い札(作業)の区間で、N04とN05のあいだに初めて黒い札(予約待ち)が立ちます。N05を出ると、次は資本金を払い込むN06です。つまりこの区間は、会社設立の手順のうち「自分の準備だけでは終わらない最初の区間」にあたります。
認証を受けた定款は、会社の成立前は原則として変更できません(会社法30条2項)。認証のあとで内容を変えたくなると手戻りが大きいので、N04の駅で商号・目的・資本金・役員などをきちんと固めてからN05に向かう、という流れの順番が大切になります。
なお、合同会社の流れではこの区間がまるごと通過になります。合同会社も定款はつくりますが、公証人の認証は要らないため、N04を出るとそのままN06の払込みへ進みます。株式会社と合同会社で会社設立にかかる日数が違って見える理由の多くは、この1区間の有無で説明できます。比較の詳細は合同会社 株式会社 違いのカテゴリーで扱います。

N04でやることは、N02「決める」の駅で固めた基本事項を、定款の形に写していく作業です。日本公証人連合会は定款等の記載例を公開しており、会社の規模や機関の形に応じた例を参照できます。

この駅は作業の区間なので、急げば短くできます。ただ、ここでの見落としは、N05での事前調査の指摘やN07の登記書類の作り直しとして後から返ってきます。会社設立の流れを短くしたいときほど、定款の案を固める手順は丁寧に進めるほうが結果的に早く終点に着きます。
定款の駅の作業量を左右するのは、発起人の人数と、定款に盛り込む事項の多さです。一人で発起人になり、取締役会を置かないシンプルな形なら、決めることも確認する相手も少なく、流れの中でこの駅は短く済みます。反対に、複数の発起人で出資の割合や役員の顔ぶれを調整する場合は、合意をとる手順そのものに時間がかかります。
メモ 定款の条文の書き方や記載事項の意味は、登記・定款・登記申請書の書き方を専門に扱う姉妹サイトの担当テーマです。このサイトでは、定款の駅を「次の駅に何を渡すか」という観点で扱います。
次の駅に渡すものを具体的に挙げると、公証役場へは定款の案そのもの、払込みの駅へは資本金の額と発起人ごとの引受けの内容、登記書類の駅へは商号・本店・目的・役員の記載です。どれも定款の駅で決まった内容をそのまま写していく関係なので、ここで数字や表記を一つに決めておくと、後ろの駅の作業がぐっと軽くなります。
N03どの公証役場に行くか:本店所在地の管轄で決まる

定款の認証は、どこの公証役場でも受けられるわけではありません。公証人法57条は、定款の認証の事務を、法人の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人が取り扱うと定めています(2026年6月24日施行の条文で確認)。
つまり、N02で決めた本店の所在地が、N05でどの公証役場に行くかを決めます。たとえば本店を東京都内に置くなら東京法務局の管内の公証役場、別の県に置くならその県を管轄する法務局の管内の公証役場が選択肢になります。会社設立の手順の中で、前の駅の決定が後の駅の行き先を縛る典型的な例です。

公証役場の所在地と連絡先は、日本公証人連合会の公証役場一覧で探せます。本店の所在地を決める段階で、近くの公証役場の場所も一緒に確かめておくと、N05の予約の連絡がすぐにできます。
本店の所在地を後から別の法務局の管内に移すと、定款の認証をやり直す必要が出る場合があります。日本公証人連合会の定款認証の案内にも、認証後に本店所在地を他の法務局の管内に変更したときは、変更後の定款について改めてその管内の公証人の認証を受けなければならない旨の説明があります。流れの最初で本店をしっかり決めておくことが、この駅の手戻りを防ぐいちばんの方法です。

日本公証人連合会の定款認証の案内では、事前に公証役場に対し、メール、FAXその他の方法で、認証を受けたい定款の案と実質的支配者となるべき者の申告書を送り、定款の内容等の適法性その他の事前調査を受けるよう求めています。この往復が、会社設立の流れの中の「予約待ち」の中身です。

実質的支配者となるべき者の申告は、2018年11月30日から、株式会社などの定款認証で求められるようになった手続です。法人の成立の時に実質的支配者となるべき者の氏名、住居、生年月日等と、その者が暴力団員等に該当するかどうかを公証人に申告します。
事前調査の返事に修正の指摘があれば、N04の駅に戻って定款案を直すことになります。この往復が何回になるか、公証役場の日程がいつ空いているかは相手次第なので、会社設立の日程表ではこの区間に余裕を持たせておくのが安全です。
予約の連絡をいつ入れるかについては、定款の案が完成してからではなく、本店の所在地と公証役場が決まった段階で一度問い合わせておくのがおすすめです。事前調査の受け付け方や、認証の日程の取り方は公証役場ごとに違うため、早めに流れを聞いておくと、案ができた日にすぐ送れます。会社設立の手順の中で、待ちの区間を短くできる数少ない工夫です。

紙(書面)の定款の認証の嘱託は、定款2通を提出して行います(公証人法58条1項)。公証人は認証を与えたうち1通を自ら保存し、もう1通を嘱託人に返します(同条3項)。日本公証人連合会の案内では、登記の申請に認証を受けた謄本1通が必要になるため、実務では通常3通を用意するとされています。

電子定款の場合、公証人法59条により指定公証人が電磁的記録に認証を与えます。日本公証人連合会の電子公証の案内では、テレビ電話を利用して電子定款の認証を受ける場合、嘱託人やその代理人が公証役場に出向く必要はないとされています。平日に時間をとりにくい人にとっては、会社設立の手順の組み方が変わる点です。
紙か電子かの選択は、この駅の手順だけでなく流れ全体に響きます。電子定款なら印紙が要らない一方、電子署名の用意が必要です。紙の定款なら道具の準備は少ない反面、原本の通数や製本、押印の確認に手間がかかります。どちらを選ぶかはN04の駅に入る前に決めておくと、定款の作り方を途中で変えずに済みます。
注意 発起人の本人確認の書類(印鑑登録証明書など)がそろっていないと、その日に認証を受けられないことがあります。必要な書類は、予約の段階で公証役場に確かめておきましょう。
N06公証役場の駅で払うもの:手数料と印紙

この駅では、定款認証の手数料を支払います。手数料は公証人手数料令35条で、資本金の額等によって区分されています。2026年10月11日に条文と日本公証人連合会の手数料の案内で確かめた内容は次のとおりです。
| 資本金の額等 | 手数料 | 前提となる条件 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 1万5,000円 | 発起人全員が自然人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の定め、取締役会を置く旨の定めがない、のすべてに当たる場合 |
| 100万円未満 | 3万円 | 上の条件を一つでも満たさない場合 |
| 100万円以上300万円未満 | 4万円 | 株式会社・特定目的会社 |
| 上記以外 | 5万円 | 株式会社・特定目的会社 |
紙の定款の場合は、手数料とは別に収入印紙が要ります。国税庁の印紙税額の一覧表では、会社の設立のときに作成される定款の原本は1通4万円とされ、株式会社の定款のうち公証人の保存するもの以外は非課税文書とされています。日本公証人連合会の手数料の案内にも、電子定款の場合は収入印紙不要と記されています。
設立にかかる費用の全体(登録免許税や印鑑代を含めた内訳)は、会社設立の費用を扱う姉妹サイトの担当テーマです。このサイトでは「どの駅で何を払うか」のタイミングだけを扱い、費用の一覧は費用 いつ払うのカテゴリーにまとめています。
支払いのタイミングという点では、公証役場の駅の手数料と印紙は、法務局の駅で納める登録免許税より先に出ていくお金です。会社設立の流れの中で、現金や印紙をいつ用意しておくかを日程表に書き込んでおくと、当日に慌てずに済みます。

公証役場の駅は待ちの区間なので、そのあいだに何を進めるかで会社設立の流れ全体の長さが変わります。逆に、待たずに先へ進むと困る手順もあります。
ここで意識したいのは、待ちの区間を「何もしない時間」にしないことです。公証役場からの返事を待つ数日のあいだに、次の駅の準備を前倒しできれば、認証を受けた日からすぐに払込み、登記の申請へと流れをつなげられます。

並行できる登記申請書の下書きや、払込みに使う口座と入金方法の確認。定款の内容が固まっていれば、認証を待つあいだに進められます。
順番を入れ替えると困る事前調査の返事を待たずに定款の原本を印刷・製本してしまうこと。修正が入れば作り直しになります。
順番を入れ替えると困る定款認証より前に、資本金の額などが確定していない状態で入金を済ませること。払込みの駅で日付と金額の整合をとる必要があります。
払込みのタイミングの考え方は資本金 払込 タイミングのカテゴリーで、電子定款やオンラインでの認証を使う場合の手順の変わり方は電子定款 オンライン申請のカテゴリーで扱っています。
N08まとめ:公証役場の駅は、連絡を早く始めた人から通過できる
◀ N07 並行できる手順と、順番…終点

定款の駅から公証役場の駅までの区間は、会社設立の流れで最初に「相手の都合」が入る区間です。日数を一律に示せないぶん、早めに動いた人ほど短く通過できます。
- 本店の所在地を決めたら、管内の公証役場を日本公証人連合会の一覧で確かめる
- 定款の案ができたら、実質的支配者となるべき者の申告書と一緒に送り、事前調査を受ける
- 紙か電子かを決め、持参するものや印紙の要否、認証の受け方を確かめる
- 待ちのあいだに、払込みの準備と登記申請書の下書きを進める
認証を受けた定款は、N07の登記書類の駅で添付書類として使います(商業登記法47条2項1号)。公証役場の駅を出たら、次はN06の払込みの駅です。全体の日程の組み方は全体像 図解のカテゴリーの路線図でもう一度確かめてください。
この区間を通り抜けたあとの会社設立の流れは、払込み、登記書類、法務局への申請と、再び作業中心の駅が続きます。最初の待ちの区間をうまく越えられれば、残りの手順は自分のペースで進めやすくなります。
終点のその先へ
公証役場の駅は、電話やメールを1本入れた時点から動き始めます。定款の案が7割ほど固まったら、完成を待たずに管内の公証役場を探し、連絡の段取りを決めてしまいましょう。待ち時間は、払込みと登記の準備にそのまま回せます。
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